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JB Press 2012年9月13日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36107
中国経済の見通し、外国の強気筋vs国内の弱気筋
中国東部の都市、天津で今週行われた世界経済フォーラム(WEF)に出席した大物経営者や世界の指導者たちの間には、実に興味深い分裂が生じたように見える。
中国の情勢に関する中国高官やアナリストたちとの静かな会話や目立たない場所でのおしゃべりでは、落胆ムードや皮肉な見方が広がっていたが、外国人参加者の中国に対する見方は概して強気で楽観的だったのだ。
広告代理店WPPのCEO(最高経営責任者)、マーティン・ソレル氏はテレビ放映されたパネルディスカッションで、中国経済が減速しているとの考えを一蹴したように見えた。
WPPでは中国事業が今年1~7月に15.5%増加したとソレル氏は語った。
中国の公式統計ははっきりしている。
中国経済では減速が続いており、
国内総生産(GDP)の年間成長率は2010年初めの12%超から今年第2四半期の7.6%まで落ち込んでいる。
中国の貿易、生産、投資、消費の低調さから判断すると、この成長率はさらに低下する可能性が高く、
今や世界第2位の経済大国となった中国の年間成長率は今年、1999年以来最も低くなる見込みだ。
■深刻な不況と大規模な社会不安を予想する中国エコノミスト
天津の会議に参加した多くの外国人の楽観論とは対照的に、ある名高い中国人エコノミストは本紙(英フィナンシャル・タイムズ)に対して、次のように話した。
「私は中国が非常に深刻な不況を経験すると考えており、それが既に始まっていると思っている。
政府は今、経済を安定させようとしているが、政府が持つ手段は非常に限られている。
もし政府が事態を好転させられなければ、その場合は
非常に大規模で広範な社会不安が生じる
だろう」
匿名を希望したこのエコノミストの注目すべき見解は、
わずか数年前にはまだ非常に強気だった中国の学者や政府高官たちの間で驚くほど一般的だ。
危機に見舞われた欧州や、まだ景気後退の瀬戸際にいる米国の目から見れば、これは、中国の経済的奇跡を演出した全能の政策立案者たちが下すにしては非常に奇妙な評価のように思えるに違いない。
かつて中国に対して弱気な見方をしていたのは大抵外国人だったが、現地の人は訳知り顔でただ微笑み、10年足らずで自国経済の規模を3倍にするという仕事に取り掛かっていた。
■外から見ると、中国がこれほど強く見えたことはないが・・・
今は外から見ると、過去200年以上にわたり、中国がこれほど豊かで、力強く、自信を持ち、止められないように見えたことはない。
だが、奇跡の真っ只中にいる人たちの多くにとっては、
中国とその現行制度は、少なくとも過去10年間では今ほど壊れやすく脆弱に見えたことはない。
世界の経済界では多くの人が、中国の指導者が知恵と先見の明という超人的な力を持っていると評価しているようだが、
内実を知る立場の人は、独立した法制度や経済的、政治的な意思決定を行うための透明性の高い仕組みがない体制の非効率性や歪みにはるかに敏感だ。
例えば、次期国家主席の習近平氏はどこに行ったのかと思っているのは外の世界だけではないという点は指摘しておく価値があるだろう。
中国の13億4000万人の国民や8300万人の共産党党員のうち、恐らく数十人を除いては習氏の居所を誰も知らない。
習氏は恐らく数日内に再び姿を現すだろうし、政府は経済が大きく躓かないように今後数カ月のうちにさらなる景気刺激策を発表する可能性が高いが、不安の高まりや不確かなムードはそう簡単に好転しない。
中国政府が2008年の金融危機に対応して打ち出したような大規模な景気刺激策を公表する可能性は低く、成長が過去10年近くの平均である2ケタの水準に戻ることはないだろう。
■交渉のテーブルの「馬鹿な外国人」?
これが意味するのは、中国が世界経済を救ってくれると期待している世界の投資家がほぼ確実に落胆すること、そして恐らく投資家は自分たちの前提を見直すべきだということだ。
非常に大きな西側の資金運用会社のある幹部は、今週のWEFで中国高官やアナリストたちと私的な会談を重ねた後で、まさにその通りにしていると本紙に語った。
「ここで聞いた話を思い返すと、今は自分が、もう荷物をまとめて空港にかけつける準備ができている中国人を相手に交渉のテーブルに着いている馬鹿な外国人なのではないかと不安になっている」
By Jamil Anderlini in Beijing
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【気なる目次(4)】
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