2012年10月30日火曜日

「これからはアジアとつきあう時代」

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NICHIGO PRESS 2012年10月29日
http://nichigopress.jp/ausnews/world/44858/

「これからはアジアとつきあう時代」
オーストラリア首相、「アジアの世紀白書」を発表

 1996年から2007年までのジョン・ハワード保守連合連邦政権は、「オーストラリアのイギリス回帰」の時期で、それまでの「アジア言語」教育が大幅に削られたことは記憶に新しい。
 2012年、ジュリア・ギラード労働党連邦政権は、
 「21世紀はアジアの世紀、アジアには膨大な中間所得階層が生まれる。
 オーストラリアはそのアジアと密接な関係を結ばなければならない」
と述べ、ハワード保守連合に敗れる前のポール・キーティング労働党政権のアジア外交政策、ロス・ガーノウ教授の提唱していた政策の回復を予告している。

 ギラード首相は、その手始めとして、現在進められている学校予算配分の大幅見直しにあわせて、アジア言語教師大幅増員を計画している。
 また、白書の中では、
 「すべての学校生徒が、北京語、ヒンドゥー語、インドネシア語、日本語のいずれかを継続的に学習する」
ことが挙げられている。
 ただし、その予算負担については、ゴンスキ教育制度見直しの一部として連邦、州、準州の政府間の協議が必要になる。

 朝のABCラジオ・ナショナル放送番組に出演したギラード首相は、
 「アジア言語教育は全国学校改善計画の中心に置く。
 その予算改革は、2014年からの学校予算配分の基礎とする。
 この計画には大量の言語教師が必要になるが、同時に、現在敷設を急いでいる全国ブロードバンド・ネットワークも国内全学校で活用される」
と語っている。
 ただし、アジア言語教育も、アジアの世紀をオーストラリアが最大限に活用するために勧告されている、白書に盛り込まれた25項目の「全国目標」の一つに過ぎない。

 保守連合は、政府の考えを原則的に支持しているが、財源については疑問を提出している他、野党保守連合ジュリー・ビショップ副リーダーは、
 「白書はあまりにも労働党の政策を支持しすぎている。
 政府部内で白書を改ざんしたのではないか?」
と疑義を挙げている。

 香港とマカオのオーストラリア企業の連合体、香港・マカオ・オーストラリア商業会議所のアンドリュー・ステッドソン会頭は、
 「オーストラリア企業がアジアに精通するにはかなりの努力が必要だ。
 しかし、すでにそれに手を付けている企業がたくさんあることを無視することはできない」
と述べている。

 政府の白書に対して、
 「この政策を実行に移すには、アジアに詳しい大勢の教師や外交官が必要になるが、一朝一夕に増やせるものではない」
と疑問を投げかけている。
 シドニー大学Asian Studies Programのエイドリアン・ビッカーズ部長は、
 「アジアとの関係を緊密にするために必要な事柄を挙げたリストとしては非常に良くできているが、そのことをはっきりさせるまでになぜこれほど時間がかかったのか。
 アジアの世紀に入ってからすでにかなりの歳月が過ぎている。
 ずっと前に、アジア諸国との関係強化を図るべきではなかったのか?
 追いつくまでにかなりの努力が必要だと思う。
 私の分野で言えば、アジアの大学はすでにかなり進んでいる。
 世界大学ランキングを見れば分かるが、アジアの大学は急速にランクを上げている。
 テクノロジー進化、社会変化、政治変化なども、オーストラリアが追いつくためだけでもかなり苦闘しなければならない分野だ。
 しかも、白書の勧告を実行に移そうにも資金も資源も不足している。
 白書に盛り込まれている言語教育だが、(ハワード政権のアジア言語教育縮小以来)学生は大学の言語プログラムからどんどん離れているというさなかの発表だ。
 どこの大学でも、たとえばインドネシア語教育は経済的に採算が取れないとしてコースの廃止を考えているさなかだ。
 国内の2大学では、十分な予算が取れない、または十分な予算を取るために必要となる学生数が集まらないため、プログラムそのものの廃止を検討している。
 それを国内全大学で考えれば、言語プログラムを続けるために必要な人数の学生を集めることは、市場の原理からもむずかしいことだ」
とかなり悲観的に語っている。

 また、連邦議会調査委員会でも、
 「現在の外務省外交官ネットワークが、対アジア政策を支えるに十分な力があるか?
 同省は過去30年間常に予算不足に悩まされてきている。
 オーストラリアは、アジアやアフリカを含めたかなりの地域で外交官が不足している」とされているが、ボブ・カー外相は、
 「外務貿易省予算が増額されればありがたいが、現在の当省は十分な外交官を配置している。
 駐ジャカルタ大使館は最大だ。
 東チモール、ミャンマー、モンゴル国との外交は成功している。
 これまでの2,3週間の間に、シンガポール、韓国、ミャンマー、タイ、フィリピン、日本の代表やASEAN事務総長が当省を訪れている。我が国の外交は強力だ」
と語っている。(NP)







【気なる目次(4)】



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