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ニューズウイーク 2012年11月28日(水)15時08分 マシュー・ゼイトリン
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2012/11/post-2779.php
「財政の崖」危機と米国債格下げのから騒ぎ
Will Credit Downgrade Matter?
[2012年11月28日号掲載]
米大統領選に決着がついて、オバマ米大統領と下院共和党は「財政の崖」をめぐる攻防を再開した。
大手格付け機関は、長期的な財政再建への道筋がはっきりしない限り、米国債の格付けを引き下げると警告している。
ただ問題は、誰も格付けのことなど気に掛けていないことだ。
例えば昨年夏、オバマと議会が連邦債務の上限引き上げで合意したときには、借金に歯止めがかからなくなるとして米スタンダード&プアーズ(S&P)が米国債の格付けをAAAからAA+に引き下げた。
普通なら、投資家はここで米国債を売るべきだろう(国債価格は下落して利回りは上昇する)。
だが実際には、ますます米国債を買い増した(国債価格は上昇し、利回りは低下する)。
債務上限の引き上げが決まる前の10年物米国債の利回りは2・82%だった。
だが格付けが引き下げられた直後の取引では2・4%に下がった。
今では1・6%まで低下している。
つまり投資家は、米政府が財政再建に失敗して債務が積み上がるほど、すずめの涙ほどの利息しか出ない米国債を積極的に買ってきたのだ。
アメリカの財政は、今また断崖絶壁にある。
来年1月1日までに議会と合意できなければ、歳出削減と増税を合わせて6000億ドルの財政引き締めが行われる「財政の崖」だ。
経済は景気後退に逆戻りしかねない。
そこでもし格付け会社が、米国債はもはやAAAの格付けに値しないと言ったら何が起こるだろう。
おそらく投資家は、手当たり次第に米国債を買う。
債務上限の引き上げ問題で不安が募った昨年夏の再現だ。
投資家は株を売り、その金で「安全資産」の米国債を買い込んだのだ。
米国債の利回りをここまで低く押し下げているのはまさにこのメカニズムだ。
アメリカ経済も低空飛行だが、アメリカ以外の経済はもっと悪い。
それに比べればリスクの少ない米国債はいくら利息が少なくても魅力的な投資対象、
というわけだ。
格付け機関の面目は丸つぶれだ。
彼らがどんなに財政赤字は長期的に経済の足を引っ張ると警告しても、投資家は米国債を買い続けるのだから。
だが、これは危険なことだ。
国債が売られ、利回りが上昇して初めて政府にとっては赤字削減の圧力が働くのだから。
米国債にはその常識が通用しない。
少なくとも今までのところは。
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つまり、アメリカがやばいといっても、それ以外にお金の行き場所がない、ということだろう。
投機なら、オイル、金、穀物とある。
でもこれは必ず利益が出るわけではない。
少なくとも、持ってて安全、つまり元本を保証してもらえるのはアメリカ国債のみということになる。
不景気が加速すればするほどそうなる。
日本政府が国債の召還でつぶれるから日本国債やはばいという。
でも国債は買われる。
同じ現象だろう。
政府はつぶれても国家は潰れない。
もう、近代経済学が光を照らす領域は限られたものになってしまい、これからは未来経済学に成らねばならないが、これはまだ姿を表していない。
学者連中は過去の遺物経済学しがみついて論じている。
明日のことがまるで見えていない。
そのうちほとんど無力になった現代経済学に代って「カオス経済学」の講座でも作られるのはないだろうか。
なにしろ、未来のことは数字では表せない。
よって、数字で判断することしかしない遺物経済学では無理になる。
【気なる目次(4)】
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